冷徹ドクター 秘密の独占愛



「じゃあ、口外(こうげ)で実習してたときに、見学してたドクターだったかもしれないってこと?」


程よく酔いがまわった帰り道。

路線の違う多恵と凛と別れ、私と華世は駅前の道を歩いている。

あのとき一緒だった華世と二人きりになり、私は少し取り戻したあの日のことをまた話題に持ち出していた。


「てか、千紗が見学してたのって、あのみんなが騒いでたドクターじゃなかったっけ?」

「あー……うん、そうかも」

「だよね! それだけは覚えてるよ。千紗、噂のドクターについてる、いいなーって思ってたし」


口外に、奇跡のイケメンドクターがいる。


トップバッターで四月から日歯の実習に行ったグループの子たちが、学校登校日にそんな土産話を持って帰ってきた。

厳しい実習先だと誰もが尻込みしていたけど、そんな浮かれた話題に日歯に割り当てられた同期はみんな日歯の実習を楽しみにし始めた。

古い記憶だけど、それは何となく覚えている。


だけど……。


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