冷徹ドクター 秘密の独占愛
「じゃあ、日歯にいたんじゃない? その、千紗のとこの副院長」
「ああ、そうだよ、七年も前とかだもん。いても不思議じゃないよね。日歯出身とかじゃなくて?」
多恵の質問に首をひねる。
大して話したこともない副院長の出身大学なんて知るわけもない。
「何か覚えてないの? 言われたんでしょ、いい加減なことしたとか何とか。それって、千紗たちが実習バックれたこと言ってんじゃない?」
問いただす凛の声にハッとした。
歓迎会のとき、“バックれる”と言われたことに、一体何のことだろうと疑問に思っていた。
『学生の分際であんな無責任なことをして、よく国家試験を受けさせてもらえたな』
ボールペンを渡されたあのときの言葉とリンクして、今になってその意味がわかる。
そして、昔どこかで会ったことがあるかもしれないという違和感……。
「もしかして……」
抜け落ちていたパズルがはめ込まれていくように、謎めいていたことが次々と繋がっていく。
私は当時のことを思い出そうと、必死にあの日の記憶を辿り始めた。