冷徹ドクター 秘密の独占愛
訳ありそうな家庭事情



「ハァ……」


水を入れた石膏をスパチュラでぐるぐるとかき混ぜる。

もう何度目かわからないため息に、横で石膏模型にワックスを盛っていた市野さんがチラリとこちらに目を向けるのが横目に映った。


「さっきから何、そのため息は」

「あっ……すみません」

「何かやらかしたの?」

「いえ、そういうわけでは……」


やらかしたのは私じゃない。

副院長の方だ。


あの寝たふりをした昼休みの日から数日が経った。

もう何度もご飯を食べて、夜は眠りについて、いつも通りの行動を繰り返しているのに未だ頭の中はパニックの真っ最中にある。



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