西城家の花





「まぁ、美桜様!今日も大変麗しくていらっしゃいます」





「本当ですね。いつもの可愛らしい感じもお似合いですが、今日の落ち着いた雰囲気も素敵ですわ」






西城の屋敷に着き、最初に美桜を出迎えてくれたのは大志の姉の満と母の聖で、空色の浴衣に身を包んだ美桜を一目見るや、うっとりとした眼差しを向け、盛大に美桜を褒めちぎっていた





流水の兄たちとは正反対な反応に少し戸惑うが、とりあえず美桜の期待通り、落ち着いた感じに見えているということに安堵した






「あの…大志様は?」






約束の時間ぴったりに西城の屋敷に着いたはずなのに、当の大志の姿が見えず、美桜が首を傾げると、満が大きくため息をついた






「申し訳ありません…。あの子ったら、つい先ほどまで稽古をしてまして…」





「まぁ、稽古に?」





「今は汗を流させるために湯浴みに行かせているので、もう少々お待ちくださいませ」







もしかしたらまだ大志の稽古が拝めるかもしれないという期待を込めつつ聞き返したのだが、満の返答に少し落胆してしまった美桜はあからさまにしゅんと肩を落とす





そんな美桜に満と聖はおろおろと狼狽えながら、中に上がってお茶でもどうかと誘ってきたが、今この状態でお茶で一服などしたら一気に緊張感が消える恐れがあったため、美桜は丁重にお断りした





実は少しでも低い身長が高く見えるように、美桜はいつもより背筋をピンと張っているため、少しでも姿勢を崩すと一気に力が抜けてしまう可能性があり、今日は色んな意味で気が抜けないのだ





大志を待っている間、玄関先で満と聖と談笑していると、廊下の奥から現れた大きな人影にいち早く気付いた美桜は、待ちに待った想い人の名を呼んだ






「大志様!」





「すまない、美桜。随分待たせてしまって」





「いえ、お気になさらず」






黒のポロシャツにカーキー色のスラックスというシンプルな服装だが、いつもの制服姿とは違う普段着に身に包む大志にきゅんと胸を鳴らし、美桜は今すぐにでも大志の厚い胸板に飛び込みたい気持ちを必死に堪える





心の中では大志様、素敵素敵とお花畑状態になっているが、今日のテーマは落ち着いた大人の女性なのでそれに気付かれぬよう表向きの淑女的笑顔をにっこりと向けた






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