西城家の花
西城の屋敷を出た時は、大志と二人で和やかな感じだったのだが、会場に近付くにつれ、自分たちと同じように花火大会へと向かう人の姿が増えていき、美桜は気を引き締めだした
今日は絶対に兄妹に見られたりなんかしない、誰が見ても二人は恋人だと疑わないように精一杯頑張らなければと美桜は少しだらけ始めた背筋をピンと伸ばす
今も手は繋いでいるが、もっと恋人同士として見られるように美桜は自分の体を大志に密着させると、一瞬体を強張らせた大志が美桜の顔を覗き込んできた
美桜はそんな大志の反応ににっこりとまたもや完璧な淑女的笑顔を見せると、大志はまた神妙な顔つきで美桜を見つめた
実はこのようなやりとりが先ほどから何度かあり、どうすればいいかわからない美桜はとりあえず笑い返すことしか出来なかった
そんなこんなで花火大会の会場に着くと、そこに待ち構えていたのはたくさんの出店で、出店と出店の間に出来た一本の道は花火大会に訪れた大勢の人によって賑わっている
祭という文字が中央に書かれている提灯が作り出す暖かなオレンジ色の光で照らされた縁日特有の雰囲気が大好きで堪らない美桜は今すぐにでも駆け出したい気分になったが、今日は大人しくしているのだと自分に言い聞かせた
「どこか見て回りたいところはないか」
大志にそう問われ、真っ先に思い浮かべたのは棒に串刺しにされた大きな真っ赤なリンゴと小さな人工的水のたまり場で泳ぐたくさんの金魚だったが、美桜は頭を振り、それらを頭の中から追いやる
「大志様が望むところでしたら、わたしはどこへでも」
「…そうか」
気のせいだろうか、美桜の返事に対して大志が少し気落ちしてるように見える
何か変なことを言ってしまったのだろうかとハラハラと大志の様子を窺っていると、前の方から聞き慣れた声が聞こえてきた
「やぁー、お二人さん!こんなところでデートなんて、お熱いですねー」
そこにはかき氷の器を片手に持っている敦司とその友人たちの姿が見えた