西城家の花
「美桜ちゃん、今日も麗しくてー、髪上げてるのも可愛いねー」
「ありがとうございます」
敦司の社交辞令をさらりと流した美桜は、敦司と一緒にいた友人たちを一瞥すると、一人とても見知った顔がそこにいる
相手も美桜の存在に気付くないなや見るからに嫌そうな表情をぶつけてきた
突然現れた敦司と友人たちと大志が会話を交わしている隙に美桜はその人物にこっそりと話しかける
「なんでここにあなたがいるの、与一!」
「うっさいな、お前には関係ないだろうが!!そういうお前こそなんでいるんだよ」
美桜ほどではないが大志たちの高校に頻繁に通い詰めている与一はすっかり敦司たちと仲良くなっており、つい最近大志から与一も交えて友人たちと遊びに行ったと聞かされた時はなんか与一に負けた気がしてショックを受けた
「見てわからないの?大志様と花火を見に来たのよ。わたしたち婚約者同士、つまり恋人よ」
『恋人』という重要ワーズを強調して話す美桜だが、そんなことまったく気付かない与一は怪訝な表情で首を傾げる
「花火大会なら、お前いつもの金魚の浴衣はどうした」
「なっ…」
家族だけではなく幼なじみである与一でさえ美桜の元来の花火大会スタイルのことを言われ、思わず声を出して憤慨したくなったが、空色の浴衣がちらりと目線に入り、今日は大人しくするという自らの誓いを思い出し、息をゆっくりと吐いた
そしてにっこりと宿敵である与一に微笑みかけた
「ふふ嫌だわ、与一ったら。わたしがいつまでもあんな子供っぽいものを着るはずないじゃありませんか」
「……きっしょ」
急に微笑みだした幼なじみを不気味に感じた与一はますます表情を強張らせ、今さっき思ったことを正直に口に出すと、二の腕に美桜の容赦ないつねり攻撃が降り注いだ