西城家の花





比較的に興味のないものを視界に入れようと、射的の出店に目を向けるのだが、景品として並んでいるうさぎのぬいぐるみに目を奪われ、美桜の歩みが一瞬鈍ってしまう





美桜の一瞬の動きの変化を見逃さなかった大志は先ほどまで人波の流れに沿って進めていた歩みを止め、美桜の腕を引き、彼女の視線の先の場所へと向かう





大志に引かれるままついていくと、目の前にうさぎのぬいぐるみが現れ、状況がまったく飲み込めない美桜の頭がはてなマークで埋め尽くされている隙に大志は出店の主人にワンゲーム分の料金を払い、鉄砲銃を構えた





突然大志が銃を構えだしたことに戸惑う美桜であったが、その姿も見事に様になっており、いつもの如くうっとりと大志に見惚れていると、パァンという発砲音が耳に響いた





その音で驚きつつも、景品棚を見てみると、一番上の端っこに鎮座していたはずのうさぎのぬいぐるみがそこになく、口を半開きにさせた間抜け面でいると、目の前にそのぬいぐるみが現れた






「あ、あの大志様…?」





「プレゼントだ。受け取ってくれるか?」






美桜のために大志がぬいぐるみを取ってくれたことが嬉しかったこともあるが、ぬいぐるみの絶妙なるふわふわ加減に心を奪われた美桜は、気付いたらそのぬいぐるみを手に取っていた





うさぎのぬいぐるみなんて抱えたら、浴衣の色や髪型に関わらず完全に子供として見られてしまうのに…





しかしふわふわとした感触が手から伝わってくるたびに、美桜はぽわぽわとした気持ちになってくる





大志が取ってくれたぬいぐるみを今すぐにでもぎゅーと抱きしめたいのだが、人目もあるし、今日はそもそも大人な女性を保たなければならないことを思い出した美桜は危ないところだったと正気に戻った





それよりも、ぬいぐるみを取ってくれたことをお礼をしなければと大志に振り返ると、何故か大志の周りにたくさんの人だかりが出来ていた






よく見るとそれらは全てさっき敦司と一緒にいた大志の友人たちでちゃっかり与一もその中に混じっている





実は美桜たちとそう遠くない場所で出店を楽しんでいた彼らは大志が重さがまったくないぬいぐるみを鉄砲銃で見事一発で撃ち抜いたところを目撃して、わらわらと集まってきたのだ





ぬいぐるみという比較的入手困難な景品を一発で撃ち抜いた大志の鉄砲銃の腕前は相当なものだと気付いた友人らはここぞとばかりに自分たちでは手に入れることが出来ない射的の出店の景品を撃ってくれと大志にせがんでいた





急に友人たちに囲まれたことに最初は戸惑っていた大志だったが、元より人の好い大志は友人たちの頼みを受け入れ、再び鉄砲銃を構える






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