西城家の花





いつもの美桜だったら、大志は今自分とデートをしているのだから邪魔するなと人だかりの中に入っていくのだが、今日は大人な自分を貫こうと、ぐぬぬと悔しい気持ちになりながらも少し離れた場所から大志が次々と景品を撃ちぬくところを眺めていた





少しでも寂しい気持ちを紛らわせようと、先ほど大志に貰ったうさぎのぬいぐるみを弱弱しく抱きしめると、隣に人の気配がした






「おひとりですか、お嬢さん?」





「…敦司様…」





「あーあー、また大志ったら目立つことしちゃって…。店主も涙目だな、ありゃあ」






見事な腕前で次々と景品を撃ち落としてく大志の姿は道行く人の目に留まり、いつのまにかたくさんの見物客が射的屋の前に集まってきているのだ





大志が誰かに注目されるのは珍しくないことで、主に彼の大きな体格が要因なのだが、今回はそこに鉄砲銃というアイテムが加わり、更に注目度を上げていた





その光景を見て、大志が誰かに注目されるのは嬉しかったのだが、同時に自分だけの彼であってほしいという矛盾した気持ちも美桜の中にあり、相変わらず子供っぽい考え方だなぁとため息をついた






「…大志様にはやはり、人を魅了して止まない方なのですね…」





「…やっぱり、何かあったでしょう?今日の美桜ちゃん、なんか変だよ」





「変、ってやはり今日の格好はどこかおかしかったのでしょうか?」






大志にも何度も神妙な表情で見つめられていた美桜は、敦司に変だと言われ、やはりこの浴衣は自分には似合っていなかったのかと落ち込んだ





しかし、敦司が言っているのは浴衣のことではなかった






「そうじゃなくて、今日の美桜ちゃん、随分と大人しいね。いつもなら今ごろあの人だかりに突っ込んでいって、大志を連れ戻してる頃なのに、今日はこんなところから見ているだけだから」





「それは…」






もちろん敦司の言う通り、今すぐにでも人混みを掻き分けて大志の元に向かいたい





しかしそれを行動にしたいと思うたびに、脳裏にあの日、ご婦人方に呟かれたあの言葉がよみがえってくるのだ






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