溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~


 ヘンナメディカルは二十五日の給与支給日に向けて、月半ばあたりから花梨たちフルーツバスケットチームが担当する人事給与システムがフル稼働を始める。
 それに伴って全国十五カ所の支店や営業所の給与担当者から問い合わせも増えてくる。

 普段は十七時三十分で対応を締め切っているが、毎月十五日から二十四日までは時間を延長して十九時まで問い合わせを受け付けることになっていた。
 問い合わせ対応の花梨は、その期間十九時まで会社にいなければならない。朝一で問い合わせがあることはめったにないので、その分遅れて出勤する事になっていた。

 シフト勤務も残り三日。毎月この頃になると、給与支給業務も明細出力や振り込み手続きに移行する。そのためシステムを利用した入力や計算の問い合わせは減ってくる。
 花梨は時々かかってくる問い合わせ電話の対応をしながら、野口くんから引き継いだ設計書の作成をしていた。

 隣の席では田辺さんがテスト系システムを操作しながら、操作マニュアルを作成している。最初は画面に入力する個人名が「陸奥旭(むつあさひ)」だの「清見はるか」だのやけに具体的なので、知人の名前でも入力しているのかと聞いてみたら、リンゴと柑橘の名前だった。よほどフルーツが好きなようだ。
 実データだと間違われたらまずいので、ひとめでテストデータだとわかる名前を入力するように注意した。

 田辺さんが隣に来た当初は、ものすごく落ち着かなかった。でも最近はほとんど気にならなくなっている。親密度が上がっているという事だろう。
 なにしろ彼女はただひとり花梨が社内で普通に話のできる女子なのだ。

 心配していた先輩女子からの嫌がらせや嫌み攻撃には遭っていないと本人は言っている。
 本当だろうかと気になったので、彼女と同期入社の女子に聞いてみたら、何人かに嫌みは言われていたようだ。ところが彼女の不思議な受け答えで嫌みが通用しなかったらしい。そしてそのうち、彼女を攻撃する者はいなくなったという。
 不思議キャラだけど同期の子たちとは仲良くしているみたいだし、ホッとした。


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