貴方が手をつないでくれるなら
「日向」
抱き起こされ、向き合って座った。
「はい」
急に真面目になんだろう。
「俺の事は、人として好きか?」
覗き込まれた。
「はい。それは、はい、好意を持っています」
「…うん。これからは一々声を掛けずに触れてもいいか…」
「大丈夫かという意味ですか?」
「そうだ…」
どうしよう…。煩いドキドキしている。触れるって…どこまでの事を言っているのか。はいって言ったら…途端に何かが起こり始めそうな気がする…。
「…はいと、いいえ、で、す。それでお願いします」
「逃げたのか?」
「え?…に、逃げたのではありません。いいえと…、駄目だと言わなくていいように触れてくれるなら、大丈夫です」
「解った…日向…」
抱きしめられた。ドキドキしたままだけど…何だか…温かくて…やっぱり安心する。この微動だにしない力強さは、何もかも全部預けて頼りたくなる…。
…あっ。腕を、私も腕を回したくて身体が少し動いてしまった。
「ん?」
「あ、ごめんなさい。あの…こんな事を言って、単純だと思わないでくださいね。信頼っていうモノが今少し解った気がして」
「何故、今…」
「それは…言葉にはし辛いです。感覚です。強く抱きしめられて感じました。単純でしょうか、感覚でそう思いました。お互いに無いモノは補い合えばいいし、頼る時は頼りたいし。頼ってくれるなら頼られたい、とか。…あ、…柏木、さん?」
抱きしめられたまま、ゆっくり横にされていた。
「あ…あの…」
見つめられていた。恥ずかしいくらい凝視されてしまってる。でも、この明るさなら、そんなに表情は解らないかも知れない。…あ。あ、おでこに唇が触れた。…ギュッとされた。
「…寝よう」
…え?…は、い?…寝ようって、眠るって事よね。この状態から、その言葉?
「ん?」
…寝るのですね?
「少しは頼れる奴だと思ってくれたんだ」
…。
「ん?」
「寝ようって、…言われると思いませんでした」
「ん?」
…。
「…このままでは、足りないって事か?…」
…。
「日向はまだよく解からない友達くらいだろ?…欲望って、無いんだろ?……いいのか?…」