貴方が手をつないでくれるなら
あー、…はぁぁ、日向の奴、どうやら帰って来ないみたいだな…。もう、あれから大分時間が過ぎた。…とうとう。そうだよな、行ったんだよな、部屋に。…なんで…。いや、俺が帰らないように仕向けたんだ。…、いやいや、この前も帰って来なかったけど、何も無かったって言ってたし。だけど今回は違うか。俺が日向に煽るような事を言ったし…。
いやいや、実際、何かあったら、何かしましたとは言わないだろ。…言えないだろ。
…あ゙ー、はぁ、俺の立ち位置ってどうなってる……?日向に取って見たら兄でしかないんだけど。柏木さんには、俺の、兄としてでは無い気持ちを話してしまったし。
あ゙ー、…解ってるんだ。こうなったら、柏木さんとそれなりに上手くいく事が一番いいんだって…。思いっ切り、あからさまに妬くけどな。…一応、陰でな。……日向。俺の大事な日向。…とうとう離れて行ってしまう。
…眠れない。いいんだ、仕方ない。だけど……余計な想像はするな。したくない…。してしまう。…眠れなくても寝る。寝るしかないじゃないか。俺の気持ちは上手く浄化されるのかな。
悠志、もう着くとか言って、俺にまた間違って連絡して来て。慌ててた証拠だ。馬鹿。フ、面白いヤツ。まーったく…飽きさせないよな~。
今夜は特に眞壁さんと待ち合わせをしているようでもなかったけど…。どこに着くって意味だったんだろう…。
…眞壁さんの家かな。まさかな~。
確かに俺が店に行った事は話したけど。夜行くか?夜行くと、部屋は店の上だろ?お兄さん、居るよな?…居るよな。今夜はどこかに出掛けて留守だとか…。あいつはそんなこそこそしないか…。こそこそしてるのは俺か。
…居るところに行くから、もう着く、だよな…。やっぱ、家か。そうだよな。
じゃあ、お兄さんに会いに?挨拶みたいなものか?
あいつが挨拶?まだつき合いも何もないのに?
……謝りに行ったのか。
兄妹で色々話をしている時に、あいつとの経緯が話に出た。
それを眞壁さんから聞いた悠志が、このままじゃまずいって、お兄さんにも謝りに行った。…んー、ありそうな事ではあるけど。どうなんだ…。
俺が、もう着くってメールして、あいつん家に行ったら慌てるかな。…そもそも居るかな。
こんな遅い時間だから、いくら何でも、もう帰ってるよな。
電話もメールも当人はどこに居るか実際は解らないんだから。
送るだけ送って見るか。
【もう着くぞ~】
はい、送信。どうだ。
…。
うん。間違いない。あいつはもう寝てる。微動だにせず、寝てる。もしくは俺だと知って、敢えて無視だ。
…はぁ、つまらん。慌てて返して来ないと遊べないじゃないか。
ブー、おっ、来た。起きてたのか…。起きたのか?
【馬鹿、どこの女に送ったんだよ。送り直せよ。うちには来るな。引き返せ】
ハハハ。よしよし、食いついて来たぞ。居るんだな。
【俺が送り間違うか!】
【は?夜になってまでもテメーに用はない。だったら来るな】
ガハハ。無意識なんだろうけど煽るように返して来るよな。…才能だな、あいつの。
【どうしようかな~。あ、本当にもう着いちゃう~】
ハハハ。どうするかな。
【来たって開けないからな。いいから帰って寝ろ。俺は寝てたんだ】
本当か?よく起きられたな…。丁度眠りが浅かったのか。
【嘘だな。起きてただろ】
だったら…、あのさっきの間は何だ?…。
【しつこい!来てるならどっか行け!馬鹿】
おー、恐。そろそろ止めてやるか。
【嘘だよ~。俺も自分の部屋だ】
【…テメー、覚えてろよ。殺すからな】
ハハハッ、…はぁ、面白かった。…あいつ、初めから起きてたな…。