一之瀬さんちの家政婦君


少し歩くと、背の高いマンションの隙間から海が臨める遊歩道が見えてくる。

デートをするカップルや近くの高層マンションの住人たちの良いジョギングコースだ。

どちらにして飛鳥には縁が無く、とくに興味も無かったからあまり行く機会がない場所でもあった。


「飛鳥ちゃん、ちょっと休憩……。あそこのベンチで休もう」


櫂人は遊歩道に設置してあるベンチを指さして言う。

先ほどまで荷物を軽々と持ち、陽気に歩いていた人間とは思えない疲労っぷり。

顔をしかめ、ぐったりと肩を落とし、まるでフルマラソンでも走ってきたような態度だ。

飛鳥はウンと頷いて「分かりました」と納得する。

それに対して、櫂人は心から嬉しそうな顔をした。


「喜島さん、ありがとうございました。お蔭でとても助かりました」


しかし、飛鳥はベンチに向かって歩き出すどころか、彼に持たせていた荷物を受け取ろうと手をのばしたのだった。


「いやいや、そういう意味じゃないからね?」


櫂人は飛鳥の荷物をヒョイと上にあげて返すまいと阻止する。

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