一之瀬さんちの家政婦君
半ば強制的に休憩をとらされる羽目となってしまった。
櫂人は飛鳥をベンチに残して近くの自動販売機へと向かった。
冷たい海風が飛鳥の頬を撫でる。
柔らかい猫毛の髪がふわふわと踊った。
真冬の海風は風邪をひいてしまいそうなほど冷たいはずなのに、澄んだ空気は心地良い。
飛鳥は目を細め、表情は次第に穏やかになっていく。
そんな彼女の事を櫂人が少し離れた場所から見ていた。
いつものように賑やかしく声をかけるわけでもなく、ホットコーヒーの缶を両手に持ったまま。
「……男扱いしてくれって無理でしょうよ」
櫂人は小さく呟く。
今、彼の前にいるのは目を離すと途端に消えてしまいそうなか弱い女の子なのだから。