一之瀬さんちの家政婦君

ほんの二、三分経った後、何食わぬ顔をして櫂人は飛鳥の元に戻った。


「ふぅ……寒い。海風はやっぱ沁みるなぁ」


「喜島さんが休憩したいって言ったんですよ?」


「だよねー。はい、コーヒー」


櫂人は明るく缶コーヒーを差し出す。

飛鳥はそれを受け取って「ありがとうございます」と礼を述べた。

温かいコーヒーを両手で握り、頬に触れさせて「温かい……」としみじみ言う。

櫂人がカチャンと缶のプルトップを開けると、続いて飛鳥もコーヒーを開封した。

二人ほぼ同時に一口飲んでふぅ……と一息つく。


「飛鳥ちゃんって法学部でしょ。将来、弁護士とかになるの?」


「そうなれたら良いなって思うけど、現実は難しいかもなって……」


「何で?飛鳥ちゃんが通う大学って偏差値もめちゃめちゃ高くて、弁護士とかになる人いっぱいいるんだろ。飛鳥ちゃんだって頑張れば――…」


「ダメな事もあるの……!」


飛鳥は食い気味に彼の言葉を遮った。
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