一之瀬さんちの家政婦君
「そうなの?休日の海浜公園を歩いて、ベンチでコーヒー飲んでさ……コレって散歩って言わない?」
「言・い・ま・せ・ん!」
飛鳥は言葉の一文字一文字を強く言い切った。
断じて認めない構えだ。
夜更けだというのに、飛鳥と櫂人の周りだけは昼間のように騒がしい。
「そんな事はどうでもいい」
和真の低く落ち着き払った一言で昼間のようだった雰囲気は一気に混沌の真夜中へと戻ってしまう。
「帰るぞ」
「はい……」
飛鳥は小さく頷いて和真の言う通りに従う事にした。
「家主さんが自らお迎えなんてずいぶん過保護だよな。心配しなくても、飛鳥君は俺がちゃんと家まで送り届けるつもりだったんだけど」
櫂人の言葉にその場の空気がピリッと張り詰める。
それは、和真から放たれる殺気にも似た威圧感だ。