一之瀬さんちの家政婦君

これはヤバイ……!


あまりお喋りになられては後々始末に負えない。

「お蔭で喜島さんにお手間を掛けせずに済みそうです。まだ片付けも少し残ってるし、マスターになにかあってもいけないので早く帰りましょう」

飛鳥はこの緊張感に冷や汗をかきながらも、必死に笑顔を取り繕って仲裁に入る。

和真と櫂人は互いにタイプが真逆だ。

相性はあまり良いとは言えそうにない。

「……」

和真は彼の言い分に何一つ反論せず、ただ飛鳥の手を強引に引いて歩き出す。

「ちょっ……一之瀬さん」

ここまで送ってくれた相手にロクに挨拶もできていないまま距離だけが広がっていく。

櫂人の姿が完全に見えなくなってしまう前に、飛鳥はなんとか顔を向けて「喜島さん、ありがとう……!」と早口で告げる。

櫂人は元居た場所でいつもの人の良い笑顔を浮かべて手を振った。
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