一之瀬さんちの家政婦君
「仲良く散歩とかしているようだし、気を抜いてヘマしたんだろ」
「人を馬鹿みたいに言わないで下さいよ。ちょっと学生証を届けてもらった――…」
口が滑った……!
飛鳥は余計な事を言ってしまった自分の口をサッと両手で塞ぐものの、それも後の祭りだ。
和真は「へぇ……学生証を届けてもらったのか」と頷きながら事実確認をする。
「お前の通う大学の学生証には、氏名、学年、生年月日、性別も書いてあったよな」
「……そうだったかなぁ?もっとあっさりした情報しか無かったような……」
飛鳥は自分の鞄を後ろ手に隠し、モゾモゾと手探りで漁る。
“見せろ”なんて言われたら面倒だから今のうちに隠さないと。
学生証がしまわれている定期入れを手の感触だけで探し当てたその時、和真が飛鳥の目の前にやってきて「見せろ」と右手を出した。