嘘は取り消せない
秋月side

塾長から昨日連絡があった
『明日から一体一で教えて欲しいんだけど
歳が近い子が蛍君しかいなくて』
別にどうだってよかったからオーケーした

そして次の日顔合わせをした時は驚いたけど
よく考えればもう他人じゃないか

「初めまして 秋月蛍です」
初めまして、か………………‥………
桜にいうとは思ってなかったな
だけど桜は俺を嫌いだと言った
だったらもう他人同然

俺の中で桜はただの生徒、
倉科さんと位置づけた

そして思ったより普通に時間が進んでいく
何も無い静寂
だけどこの静寂が居心地悪くて
昔二人でいた時は静かであっても
すごく幸せだった

「ねぇ」
少し声をかければ大きく跳ねる肩
「な、んですか? 秋月先生」
「おれ彼女出来たから」
これは本当のこと
桜と別れたのが三年前
その一年後の二年前に付き合った子
あ、今はもう、倉科さんか
「…っ急に何のことですか?」
へぇ、そっちが振ったのに
「わからないなら別にいいけど」

なんで俺はこんなこと言ったんだろう
何が伝えたかったんだ?
祝福して欲しかったのか?
後悔して欲しかったのか?
泣いて欲しかったのか?
謝って欲しかったのか?

そしてまた静寂
だけど今回はそう長くは続かなかった

「彼女、きっと可愛らしい人なんでしょうね
おめでとうございます」
「どうも」

まさか祝福されるなんて思ってもなかった


その時の俺は倉科さんが昔と同じような作り笑いになっていることに気づいて
しまったんだ



だけど、それに気付かないふりをした
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