ミステリアスなユージーン
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岩本菜月に興味は湧いたが、恋愛対象としては些か幼く感じた。

あからさまに俺に見とれていたから、若干の不安を覚えたのも確かだ。

……こういう勝ち気な女は、好きになった相手に猛アタックを繰り返し、相手の迷惑を省みないタイプが多そうに思えた。

釘を刺した俺に彼女は、

『私、彼氏いるから安心して。それにいくらビジュアルがドストライクでも佐渡君を好きになる日なんか百万年生きれたとしても来ないから大丈夫だよ』

なんて可愛くない女なんだ。俺だって願い下げだと思った。

ところが俺に不思議な事が起こった。それは新入社員の歓迎会での事だった。

俺は多分……その日に彼女に恋をしてしまったのだと思う。

居酒屋に姿を現した彼女は、仕事を目の前にした時とは全く別人のような印象で、眼が合った瞬間、強く鼓動が跳ねた。

フワフワとした可愛らしい笑顔や、職場の皆を気遣う優しい眼差しや態度。

異性同性を問わずどこか隙があり気さくで、それが作られたものではないのが一目瞭然だった。

年下からは慕われ、年上からは好かれているのがこの飲み会の間にすぐ分かった。

完全にギャップ萌えだ。
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