ミステリアスなユージーン
「課長?課長がいずれ彼女と結婚するのは知ってたよ。バレてるみたいだから言うけど、彼とは身体だけよ。それに……安藤君みたいに可愛い男の子が案外想像を越えるかも知れないでしょ。……まあ佐渡君はイケメンだけど持ち前の性格の悪さで独りよがりのセックス……きゃあっ」

私の言葉を遮るようにして、再び佐渡君が腕を掴んだ。

おまけに驚く私を気にもかけず、そのまま狭い路地に入ると振り向きもせずに歩き出す。

「ちょっと!どこ行くのよ離してっ」

気でも狂ったのかと思うほど冷たい声で佐渡君が言葉を返した。

「行き先は俺のマンションです。それから着くまでは離しません」

「何言ってんの?皆が変に思うでしょうがっ」

「じゃあ安藤君に電話します」

言うなり彼は、私を掴んでいる手とは逆の手で器用にスマホを操作し、耳に当てた。

「もしもし、佐渡ですが岩本さんが飲み過ぎて気分悪いらしいです。すごく迷惑な話ですが俺、送って帰りますから二次会はパスします。すみません、はい。はい」

「コラーッ!私は飲み過ぎてもないし酔っぱらってもない!」

叫んだ私を佐渡君が振り返って刺すように見た。

「そんなひどい顔をして二次会にいくんですか?俺だけでなく皆にバレますよ、課長に失恋したことが」

「なっ……!」
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