ミステリアスなユージーン
柔らかな唇の感触と、至近距離にある彼の熱い身体。

生意気な言葉と態度からは想像出来ない程、優しいのに情熱的な佐渡君のキス。

意に反して、胸がドキンと跳ねた。

だって佐渡君がキスをしたまま、私の両頬を手のひらで包み込んだから。

それも大切な物を扱うように、フワリと優しく。

大きな彼の手の平は温かくて心地よくて、身体の隅々にまで電流が伝うような感覚が芽生えた。

何度も角度を変えて私にキスをする佐渡君に、思考が追い付かない。

半ば伏せられた瞳は色気に彩られ、見つめずにはいられない。

頭が痺れるような、快感にも似たようなこの高ぶりは一体。

無意識に、私は彼の首に両腕を絡めた。

「……もっと」

僅かに空いた唇の隙間から、吐息のように呟いた私に佐渡君が言葉を返す。

「もっと……何ですか」

痺れる中、私は再び思った。

この男は。欲情を煽るような口付けの果てにそれを問う、この男は。

「……いや……いい」

「……いいんですか本当に、ここでやめても」

「佐渡君こそ……」

相手の出方を見ながら探り合う私たちは、同じくらい狡い。

やがて佐渡君が私から唇を離した。

冷たい空気が唇に触れ、視線が絡む。

でもそれはほんの一瞬だけで、彼は私を再び抱き上げると部屋の中へと進んだ。

「キスだけで終わらせるほど、お互いに子供じゃないでしょう」

言い終えると佐渡君は、何も言うなというように再び私に口付けた。

これでいい、今夜は。

頷く代わりにもう一度彼の首に腕を絡めると、私は眼を閉じて彼のキスに答えた。
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