ミステリアスなユージーン
「ちょっと!あれはね、一杯二千円の高級品なのよ!名前書いてたのにどうして勝手に飲むのよっ」

キッと睨んで声を荒げる私に佐渡君は、

「それは気付かなかったなあ。すみません」

「ダメ!」

私のこの声に佐渡君が眼を見張った。

「返してっ」

「……」

見つめ合っている内に、ポカンと私を見ていた彼の顔が徐々に変わった。

「じゃあ……一昨日の宿泊費ということで」

言い終えた途端、彼が僅かに眼を細めてニヤリと笑った。

「それにワイン二本と俺の身体と、」

一瞬でカアッと全身が熱くなり、私は眼を見開いた。

「ちょっと!何言って……!」

加えてたちまちバクバクと心臓が騒ぎ出す。

「あんなに乱れておいて……何を今更焦ってるんですか?」

バ、バ、バ、バカじゃないのっ?!

咄嗟に佐渡君に飛び付き、私は彼の形の良い唇を利き手で塞いだ。

だって、ドアが開きっぱなしなんだもの。

「うわっ」

ところが、華麗なステップで彼に近付いたつもりが足がもつれてつんのめり、私は佐渡君の身体に体当たりをする勢いでダイブしてしまった。

「おっと」

固い彼の胸に頬が密着し、抱き合うように身体が絡まる。

「バカッ、離してっ」
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