ミステリアスなユージーン
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「……凄く、よかった」

私がボソッと一言こう発すると、沙織は深い溜め息をついて真上にあるライトを切な気に見上げた。

「そっかあ……よかったじゃん!新庄課長とスッパリ別れてさ、ユージーンをゲットすれば」

「それはやめとくよ。何の取り柄もないアラサーなんか興味ないんだって」

「うわ、キツ!」

ガタンと沙織の手からジョッキが少し滑り、テーブルに音を響かせた。

「涙が出るくらい悲しかったくせにさ、ユージーンと寝たらアッサリ吹っ切れたんだよね。ひどいヤツでしょ私。多分あの涙は新田麗亜さんが成人した事を言わずに、バレるまで私と関係を続けようとしていた課長の心に裏切られた悲しさだったんだと思うの。だからユージーンと一夜を共にして、彼が課長の前で恋人役を演じて仕返しをしてくれて、もう吹っ切れたんだ」

私の言葉に耳を傾けていた沙織が、再びハアッと吐息を漏らした。

「なに、ユージーンは一瞬であんたを救う手だてを考え出して実行し、成功したわけ?」

私は苦笑しながら沙織の綺麗な顔を見た。

「何の取り柄もないうえに、惨めに捨てられそうになってたアラサーが不憫だったんじゃないの?けど少なくとも私はあの夜、彼とああなって後悔はしてない」

「……新庄課長は?彼とは話したの?」

「……うん……。なんか歯切れが悪くてさ、ちょっと幻滅したわ」

言い終えた私に、沙織が大きく頷いた。
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