ミステリアスなユージーン
第三項目

ユージーンは優しい

∴☆∴☆∴☆∴


その夜。



『何してるんですか?』

『……別に。家で飲んでるけど』

『なに飲んでるんですか?』

『ハイボール』

『ひとりですか?』

もうーっ!なんなのよっ!

私は佐渡君からのラインにイラッとして舌打ちした。

夜、シャワーを浴びて汗を流し、お酒を飲みながらテレビを見たり本を読むのが私のリラックスタイムだ。

それなのに。

どうせまた、『新庄課長にフラれてやけ酒ですか』だの『独り身のアラサーは寂しいですね』とかいう返しだろう。

そうはいくかっ!

ゆったりと過ごしていた至福の時を邪魔された忌々しさに眉を寄せると、私は少し考えてから文字を入力した。

『残念でしたー!今、安藤くんと飲んでますよーだ』

嘘だけどな!

送信した途端に既読と記されたけど、彼からの次の一手が来ない。

フッ、観念したか。

私はニヤリと笑うと空になった空き缶を手に、キッチンへと向かった。
< 54 / 165 >

この作品をシェア

pagetop