ミステリアスなユージーン
「新庄課長はなんて?」

「菜月さんに任せるって……」

今、私の受け持つ仕事は来月までいっぱいだ。

しかも施工業者との兼ね合いもあり、予定よりも引き渡し日が早まる事はまずない。

「今回は別のチームに回せないか課長に聞いてみるよ。課長は社内?」

私がそう言った時、仙道君が首を横に振った。

「それが……大女将直々に菜月さんをご指名らしくて」

「大女将が……」

私は、気品をたたえ、優雅でありながらしっとりと着物を着こなした美しい大女将を思い出して苦笑した。

「……参ったなあ」

「多分、大女将はあの時の菜月さんの計らいが嬉しかったんだと思うよ」

仙道君が同じく私を見て困ったように微笑む。

……私を指名してくれるのは嬉しいけど……チーム編成し直さないと厳しいかも知れない。

だって、この分じゃ休日返上は確定だ。

ゴールデンウィークも連休とはいかないだろう。

チームの全員がそれを快諾するとは思えない。

私が腕組をして考えていると、後ろから爽やかな声が耳に届いた。

「僕、実家がこっちなんで、帰省とかしなくていいし休日返上で働けます。是非岩本さんのチームに入れてください」

「……安藤くん……」
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