ミステリアスなユージーン
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「徹夜って事は……会社に泊まるんですか」

定時後、ブレイクルームでコーヒーを飲んでいた私は、佐渡君の問いに軽く頷いた。

「うん」

「そこまでしなきゃならないんですか?呉服店には無理だと言えばいいじゃないですか」

「それは絶対にダメ」

「何故です?」

私は佐渡君の問いに答えず、唇を引き結んだ。

「佐渡君、もう帰っていいよ。お疲れさま」

少しだけ緩い雰囲気の漂う定時後のオフィスは、人もまばらだ。

結局私のチームは、休日返上で『呉服桜寿』のプロジェクトを進める決意を固めた頼もしい人間ばかりだった。

それに安藤くんは連休の間手伝ってくれる事になり、なんとか人員は確保できた。

「俺がいても何の役にも立たないって言いたいんですか?」

「そうじゃないけど佐渡君って、私の事嫌いでしょ?前に『何の取り柄もないアラサー』って言ってたし」

急にこんなことを言い出した私に面食らったのか、佐渡君は両目を見開いた。

「私は今から自分の持ってる全てをスペースデザインに注がなきゃならない。私を指名してくれて、私の手掛けた空間を待ってくれている人がいる。今夜やる仕事は行程の中でも一番重要な事なの。モチベーションを上げて取りかからなきゃ携わる全ての人に迷惑がかかる。だから、私を否定する人間とはいられないのよ」
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