ミステリアスなユージーン
一度そらした視線を再び佐渡君に戻すと、彼は呆気に取られたように私を見ていた。

「こんな事言うなんて可愛くないし益々嫌われるかも知れないけど、私の人格を否定する人とは二人きりでいたくない。余計な事に気を取られてるといい仕事が出来ない。集中したいの」

ああほんと感じ悪い、私。

分かってる。分かってるよこんな根性悪い言い方しなくてもって。

でも佐渡君、私には毒舌なんだもん。

モチベーションを下げたくないんだもん。

大女将が私のデザインを待ってくれてるんだもん。

完全にイケメン・佐渡に嫌われただろうけど、仕方がない。

私は佐渡君にもう一度お疲れさま、と言うと、受話器に手を伸ばした。


∴☆∴☆∴☆∴

「あなたを信じているから、あなたに全部任せるわ。希望を言うとしたら、若者に和装の良さを伝えられるお店にして欲しいわね。それともうひとつ。出来るだけ早く完成させて欲しいのよ」

あれから呉服桜寿の大女将にアポを取り、二階のフロアをチェックした後、店舗の詳しい要望を訊いた私に彼女はこう答えた。

三ヶ月前よりも幾分か痩せた大女将は、相変わらず素敵だった。

長く生きた人間にだけに与えられた独特の美しさをまとった彼女は眩しくて、私は夢中でこう言った。

「大女将。期待していて下さい。私、大女将に喜んでいただけるようなお店にしてみせます」
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