ミステリアスなユージーン
「あ、佐渡君は残業も徹夜もしなくていいからね。もう十分助けてもらったから。ありがとう」

私がそう言って佐渡くんを見上げて微笑むと、彼は固く唇を閉じて私を見下ろした。

「……」

「ん?」

「……」

「なに?」

「今日」

ようやく佐渡くんが短く言葉を発した。

「今日?今日なに?」

「今日はまさか……残業しないでしょう?俺、家まで送りますよ」

……今日は……実は定時では帰れない。

「ありがたいけど……今日は無理なんだよね」

私がこう言うと、佐渡くんが僅かに両目を細めて眉を寄せた。

それから再び、即答した私を黙って見つめる。

その顔に少し影が落ちた気がしたから、私は正直に理由を言った。

「今日はね、施工業者さんの接待なんだよね」

彼は私の言葉を黙って聞いていたけれど、すぐにこちらを見据えて低い声を出した。

「……課長と二人でですか?」
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