【完】蜂蜜色のヒーロー。
*
「……妃莉!!」
教室に響く声は久しぶりに私の名前を呼んで、その声は息が切れていた。
手にはちゃんと靴箱に入れておいたふたつのものが握られていて、手紙を見たんだなぁ、とのんびり思った。
って……!
「み、御津くん!? 放課後にって……!」
「待てねえっつーの。これ以上待たせたら、いいほうに期待するけど」
「わ、……でも!!」
ぐいっと手を引かれて、クラスメイトにからかわれる中、私は御津くんと屋上まで走った。
御津くんはものすごく軽々と走るけど、運動音痴な私は息も絶え絶えで、苦しくて。
「み……と、くん…!」
「……なんだよ」
「は、速いよ……っ」
「速くねえよ」
屋上のドアが、ギイと音を立てて開いて、ふわりと風が鳴いた。