冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
リアネル・バートフィールドの来訪後、クラウスの態度もどこか変わった。
なんというか、フロイラを気遣ってくれているようなのだ。

皮肉や毒舌はあまり飛んでこないし、テーブルにはなんだかんだとフロイラの好物が並ぶ。
気を遣わなければいけないのはこちらのほうなので、正直当惑してしまう。

フロイラ、明日出かけるぞと、ある朝クラウスに唐突に言われた。

「はい、行ってらっしゃいませ」

半分機械的に返事をすると、お前もだと返ってきた。

「わたしも、ですか・・・?」
目をぱちくりさせる。また舞踏会だろうか?

「王立劇場のテラス席が押さえられたからな」

「えぇっ!? 本当ですか?」
はしたなく大きな声を出してしまう。

王立劇場で行われる催し物は、オペラであれ劇であれコンサートであれ、どれも大変な人気でチケットは手に入りづらく、そして高価だ。
王立劇場に行ったとあれば、フロイラの通っていた女学校では一ヶ月は自慢話ができるくらいだ。
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