冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
フロイラの知る善悪というものの彼岸を超えて、クラウスの姿は目に美しい。
それはまぎれもない事実だった。


真紅の絨毯が敷きつめられた王立劇場のロビーは、めかしこんだ人々でごったがえしていた。ここは一つの社交の場でもあるのだ。

そんななかを、クラウスにエスコートされて進む。

ーーーまぁ、奥様、ご覧あそばせ、あちらのお二方、まるで絵のように輝いて

ーーーほんとうに、なんてお美しいカップルなのかしら


老婦人たちのささやき合う声が耳に入った。

わたしたちのことかしらーーー?

だとしたら、クラウスとこのドレスのおかげだ。

平凡な自分に魔法をかけてくれたのだ。このひと時だけは、プリンセスになった気持ちでいよう。

顔をまっすぐ上げ、胸をこころもちそびやかしてクラウスの隣を歩いた。
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