冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「これからきみを新しい檻へお連れしよう。あの目障りな侯爵も小生意気な家令も不在とくれば、ここにわたしを止められる者はいない。世間的には身寄りのない令嬢のパトロンが変わるだけの話だ」


タスケ・・・

「まだ意識があるようだな。もう一回かがせてあげよう。これで完全にーーー」

ーーーヒュッ

鋭く空を裂く音。

ピッ! パシッ! と小刻みな音がつづく。

リアネルが息を飲み、「なっ!?」と驚きの声を上げて、振り返る。

「ーーーどうも、出自が卑しいもので、手癖が悪くて。鞭を使うのが得意でね」

「侯爵ーーー」
リアネルの呆然とした声。

クラウス・・・さま・・?
その姿を見ることはできない。首どころか、眼一つ動かすことができない。

「さすが生まれながらに高貴なお方は、怪しげな薬を入れるアトマイザーさえ紋章入りとは」

間違いない、クラウスの声だ。

「返せっ」
リアネルが噛みつくように叫ぶ。
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