冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
ドレスの裾をつまんで、くるりと回ってみる。

かろやかなレモンイエローのジョーゼットのスカートがふわりと舞い上がる。幅広のサッシュとあいまって、蝶が舞うすがたを思わせた。
生地も色合いもデザインも、申し分なく美しい。

姿見の中に映る女性がきれいに見えるのは、このドレスのおかげだ。羽が美しい鳥の姿は美しいのだから。

でも・・・美しい鳥だから、羽もきれいに見えるのだと思いたい。

左胸の奥が、トクトクと騒いでいる。


窓から差し込む陽に、磨かれた寄木張りの床が葡萄酒色に輝いている。

うつくしいと、目に映る世界がどこまでもうつくしく感じられる。
こんな感覚は初めてだった。

誘われるように、廊下へ出る。

裏庭の花を摘んで、花の冠をつくってみようか。そんな心地だ。
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