冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
とりとめのないメイドのおしゃべりを聞き流しながら、ひたすら馬車の窓から外を眺めていた。

“観察” はルーシャにもできる数少ないことだから、熱心に外に視線を向ける。

「あら、あそこ」
ルーシャは気づいて口に出す。

幼い少女が一人で歩いている。うつむきかげんで腕に何かを抱え、泣いているようだ。

袖のふくらんだ小花模様のワンピースに白いエプロンという格好。
農場の子どもにしては服が上等で品がいい。中流階級の子どもだろう、と素早く見てとる。

「まあ、泣いているみたいですね。迷子かしら」
メイドが心配そうな声を出す。

だとしたら、放っておくわけにいかない。馬車を止めて、と馭者に指示を出した。

「あなた、どうしたの。なぜ泣いているの?」
馬車を下りて、少女に声をかけた。

びっくりしたように少女が泣き顔の瞳をしばたかせる。
その反応がなんとも愛らしく映った。
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