冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
着せる服は、小花模様のローンの布地にした。
「あの子が着てた服に似た柄がいいわ」
「ルーシャ様、よく憶えておいでですね。一度会っただけですのに」
メイドが目を丸くする。
忘れられないのだ。あのベソをかいていた小さな女の子が。
アナベルの手でおさげの髪と目と口がつけられ、新しい服を着せられて、リリアはすっかりかわいく生まれ変わった。
ルーシャは満足感をおぼえつつ、早く持ち主に見せてやりたいと思った。
翌日、園丁が門の前に女の子が来ていると教えてくれるや、ルーシャは素早くリリアを手にとり表へ出た。
人形を手渡したときの、少女の喜びと驚きをあふれさせた笑顔。人形に頬ずりする満ち足りた表情。そして繰り返されるお礼の言葉。
胸が不思議と温かくくすぐったい感情でいっぱいになる。
それは今まで味わったことのない感覚だった。
9歳にして、人生に倦み孤独を友として、益体もなく生きている自分にもできることがあった。
つまり、いま目の前にいる少女の涙を笑顔に変えることができるのだと。
それは新鮮な驚きと喜びだった。
「あの子が着てた服に似た柄がいいわ」
「ルーシャ様、よく憶えておいでですね。一度会っただけですのに」
メイドが目を丸くする。
忘れられないのだ。あのベソをかいていた小さな女の子が。
アナベルの手でおさげの髪と目と口がつけられ、新しい服を着せられて、リリアはすっかりかわいく生まれ変わった。
ルーシャは満足感をおぼえつつ、早く持ち主に見せてやりたいと思った。
翌日、園丁が門の前に女の子が来ていると教えてくれるや、ルーシャは素早くリリアを手にとり表へ出た。
人形を手渡したときの、少女の喜びと驚きをあふれさせた笑顔。人形に頬ずりする満ち足りた表情。そして繰り返されるお礼の言葉。
胸が不思議と温かくくすぐったい感情でいっぱいになる。
それは今まで味わったことのない感覚だった。
9歳にして、人生に倦み孤独を友として、益体もなく生きている自分にもできることがあった。
つまり、いま目の前にいる少女の涙を笑顔に変えることができるのだと。
それは新鮮な驚きと喜びだった。