冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
毎日ふたりで手を繋いで庭をかけ回って遊び、並んでブランコをこいだ。遊び疲れたら、草の上に布を広げて、お茶とお菓子を楽しんだ。

すっかり馴染んだはずの庭なのに、フローといるだけで、心の底から楽しい、嬉しいという気持ちがわいてくるのだ。
フローに会いたい、一緒にいたい、と強く思う。

それはたとえば、父母や、世話をしてくれるメイドや、通ってくる家庭教師に対する気持ちとはまったく異なるものだった。

それを表現する言葉を持たなかったから、ただフローと手を繋ぎ、柔らかな髪を撫で、ときおり小さなくちびるにキスをした。

もうすこしルーシャが世界を広く知っていれば、それが恋と呼ばれるものであると自覚できたはずだ。

この愛らしい存在を自分のものにしたいという欲求は、日に日に大きくなっていった。部屋に積まれている人形やぬいぐるみの山などいらないから、この少女のすべてを手に入れたかった。

いかんせん自分は幼く無力で、おまけに少女の衣をかぶせられている状態ではどうしようもなかった。
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