冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
それにしても、言い表わしようのない解放感だった。
重たいドレスと暑苦しいカツラを脱ぎ捨てると、しっくりくるというのだろうか、本来の姿に戻ったような懐かしささえおぼえるのだ。

やはり自分は病弱な女の子などではない。身軽に林の中を駆けながら思う。

男の子なんだ!

フローを庭園の外へと誘ったあの日のことを、後年クラウスは何度も思い返すことになる。

自分と、そしておそらくはフローの運命も大きく変わることになった出来事を。

庭の外に出ることを提案すると、フローは不安そうに瞳を揺らした。

思えば庭園だけでは飽き足らず、外に出たいと思い実行に移してしまうところが、いかにも少年の行動だ。

しぶるフローをそれでも誘い出し、得意げに林の中を案内して歩いた。来てしまえば、フローも楽しげな様子だった。

ルーシャは浮かれて、すっかり失念してしまっていた。今は少女の姿だということを。
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