冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
クラウスの起こした事態は想定外であったものの、子どもの成長自体はむろん予想していたことだった。
当たり前だが、少年がいつまでも少女と偽れるわけがない。

急遽時期を繰り上げて、父によって手配してあった隣国の隠れ家に移ることになった。

クラウスにとってははなはだ不本意なことに、引っ越しの際には少女の格好をしなくてはならなかったが。それがクラウスにとって最後の少女姿になった。

そしてフローに、自分を取り戻させてくれた少女に、別れも言えずじまいだった。

隣国まで逃れて、ようやくクラウスの “少女期” は終わりを迎えた。

新しく住むことになったのは、これまた小さな町の外れにある屋敷だったが、以前とは異なり同居人がいた。

母のはとこにあたる女性と、彼女の息子であるリュカだ。

彼らに夫や父にあたる男性はいなかった。戻ったら結婚する約束で軍務へ赴いたのだが、感染症で命を落としてしまったという。
身ごもっていたリュカの母は、ひっそりと男児を出産した。
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