冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
出会った当初、リュカはクラウスの先生のようなものだった。
リュカを手本に男としての言葉遣い、仕草、振る舞いなどをどん欲に真似、自分のものにしていったのだ。

すんなりとクラウスは男としての自分になじんでいった。ようするに本来の自分を解放すればいいだけなのだから。

身分を伏せて、リュカとともに町の学校にも通うようになった。同じ年頃の子どもとのふれ合いは、発見の連続だった。

ここで得た最大のものは自信だった。勉強も運動も、たいがいのことは他の子よりもうまくこなせた。リュカという存在の心強さもあったが、しだいに集団のリーダーシップをとるまでになった。

四人で暮らした穏やかで楽しい日々。今振り返ってもそう思う。

母の最後の日々が、少しでも心安らかであったのがせめてもの救いだ。

ヴィンターハルター一族によって目減りさせられた母の命の灯は、風に吹かれたように、その日を迎えて消えた。
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