冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
リュカは時期をずらして、身寄りをなくした親戚の子どもとして、侯爵家に引き取られた。

クラウスは数年ぶりに生家に戻った。

父はあらゆる犠牲を払い、亡き妻の忘れ形見、表向きは後妻との間の隠し子であるクラウスに爵位を継承させることに、執念を燃やした。
領地を割譲し、財産を分与することで親戚の反対を封じ、クラウスは後継者の座につき、命を狙われるような怖れもなくなった。

強くなりたい。当時の自分の望みを集約すれば、その一言だった。
無力さゆえに母は危害を加えられてもなすすべもなく、自分は女と偽って生きることを強いられた。

人生が闘いで、この世界が弱者にどこまでも残酷ならば、その闘いに勝ってみせる。
クラウスのために父は、国の内外を問わず優秀な教師を呼び集めた。
数学、正書法、地理、図画、歴史、馬術、音楽、さらには哲学、法律学や政治学、天文学、工学までも貪婪なまでに吸収していった。
学ぶことが、将来の自分の武器になるとすでにして悟っていたから。
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