冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
一縷の望みをかけて、せっせと社交界に顔を出していた時期もある。
クラウスが黒髪の令嬢にばかり目を留めるものだから、一時期若い女性たちのあいだで、髪を黒く染めるのが流行ったほどだ。
フローとの再会は果たせず、クラウスの足はしばしば裏庭に向かった。
生家に戻り、外を出歩くようになってひとつ驚いたことが、邸の北側にあの庭園とそっくりの庭があることだった。そのまま移し替えたのではないかと思うほどだった。
種明かしというほどでもない単純な話で、父が母のために作らせたものだったわけだが。
母が幼い頃よく滞在したという、親類の屋敷の庭の存在を知った父が、邸に閉じこもる妻の心の慰めにと贈った庭だった。
もともと貴族の屋敷の裏手には、調理や薬効のためのハーブを採るハーブ・ガーデンがあることが多い。
ヴィンターハルター邸も例外ではなく、もとあったハーブ・ガーデンに大きく手を加えて裏庭にしたのだ。
木の種類、花壇の配置、レンガの色合いにいたるまで忠実に再現された庭に、父の妻への想いの深さが言葉以上に感じとれた。
クラウスが黒髪の令嬢にばかり目を留めるものだから、一時期若い女性たちのあいだで、髪を黒く染めるのが流行ったほどだ。
フローとの再会は果たせず、クラウスの足はしばしば裏庭に向かった。
生家に戻り、外を出歩くようになってひとつ驚いたことが、邸の北側にあの庭園とそっくりの庭があることだった。そのまま移し替えたのではないかと思うほどだった。
種明かしというほどでもない単純な話で、父が母のために作らせたものだったわけだが。
母が幼い頃よく滞在したという、親類の屋敷の庭の存在を知った父が、邸に閉じこもる妻の心の慰めにと贈った庭だった。
もともと貴族の屋敷の裏手には、調理や薬効のためのハーブを採るハーブ・ガーデンがあることが多い。
ヴィンターハルター邸も例外ではなく、もとあったハーブ・ガーデンに大きく手を加えて裏庭にしたのだ。
木の種類、花壇の配置、レンガの色合いにいたるまで忠実に再現された庭に、父の妻への想いの深さが言葉以上に感じとれた。