冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
視線を落とし、長身の家令の後ろを歩く。
数歩先をゆくリュカの革靴を視界にとらえながら、足を進める。

この邸で目につくものすべてがそうであるように、彼の靴もよく磨きこまれた上質な品だ。
それでも減った踵や寄った皺が、彼の日々の勤勉な仕事ぶりをうかがわせる。

通されたのは、三階の北の端の部屋だった。
妙な印象を拭えない。

貴族の端くれとしての知識によれば、一階は主に外交、社交のための空間。
二階は、主人の住まう居住区。三回は客人のためのゲストルームや物置に割り当てられるはずだ。
当主が三階で待つとはどういうことだろう。

リュカがドアをノックすると、「入れ」と応える声がした。
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