冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「あの、このたびは・・・」
なんと言葉を続けてよいか分からず、スカートのすそを持ってお辞儀をする。

「サイズはよく合っているようだな」

ドレスのことを言われたのだと察する。

「こんな素晴らしいものを用意していただきまして・・・」

「この邸にいる以上、みすぼらしい格好をされていては困るからな」

みすぼらしい・・・
父の思いやりを、そんな言葉で踏みにじられたくはなかった。

「侯爵様」
思い切って口を開く。

なんだ、と眼差しだけでクラウスが返す。

「お心遣いはありがたいのですが、ここまでしていただくいわれはございません。家から持ってきたものもございます。どうか、これ以上のものは・・・」

みすぼらしくとも、古びていても、粗末であっても、両親との思い出の詰まった、大切な品々だった。
それらに囲まれていれば、この見知らぬ場所にいる心細さも慰められることだろう。
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