冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
クラウスがつと視線を窓の外、その下へ向けた。
組んだ腕にのせた人差し指をくいと動かして、なにかをしめしてみせる。

なに、を・・・?

そろそろと足を進め、窓際に近づきクラウスの視線と指の先にあるものを探す。

邸の北側、建物の背後に位置する使用人用の棟だった。部屋に囲まれるように中庭が設けられている。燃料箱、灰入れ、そしてゴミを処理するための黒光りする大型の炉。

数人の雑役夫が何やら作業をしている。中庭に積まれているトランクには見覚えがあった。

「あ・・れ・・は、」

家令のリュカが中庭に姿をあらわした。

リュカがこちらを見上げる。クラウスがうなずき返すのが視界の端に映る。
それを合図に、リュカが雑役夫たちになにごとか指示を与えた。
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