冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
———・・・・


ようよう枕にうずめていた顔を上げる。

いま何時くらいかしら・・・

窓の外に見える空は、夕暮れの色を深めている。

どのくらい泣いて伏せっていたのか・・・


———これが現実なのだと思いたくなかった。
そのせいか記憶は、どこか曖昧で混濁している。

すべての持ち物を炉で燃やされ、その様子を見させられた。
クラウスの腕を振りほどこうと、しばし身をもがいたり、子どものように泣きじゃくったり、泣き止もうと無理に息を殺したり。
はては過呼吸状態に陥り(ここがいちばん思い出したくないのだが)、クライスにくちびるをふさがれ、直接息を吹き込まれる羽目になった。

しまいに虚脱状態になったフロイラは、彼に抱き上げられ自分に与えられた部屋に戻され、ベッドに横たえられた。

クラウスが部屋のドアを閉め去ってゆく足音を、ぼんやりと聞いた。
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