冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
どうして・・・

そう思う思考力くらいは戻ってきた。

彼は、クラウス・ヴィンターハルターは自分を憎んでいるのだろうか。
『安逸な死など与えてやらん』と告げた彼の言葉。
苦しめるために、自分を生かしたのか。でもなぜ・・・

ベッドに突っ伏して、せっかくのドレスがシワになってしまいそうだが、確かめる気力はなかった。
クラウスから与えられた衣装など、脱ぎ捨ててしまいたかったが、脱いだところで自分にはもう着るものがないのだという事実を突きつけられる。

家にあった荷物を望むだけ運んできてくれたのは、彼の優しさなどではなかった。
———すべてを焼き尽くすためだ。


ぶるりと身体が震える。

父を亡くした時は、これ以上の悲しみ苦しみはあるまいと思った。
絶望したからこそ死を選んだのだ。

クラウスのいう「安逸な死」を望んだ罰なのか、生に引き戻され、こうしてのたうっている。
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