冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「こんな部屋ですとか衣装を与えていただく必要はありません。
もともと生家ではろくに人を雇う余裕もなかったので。家のことは大抵やっていました。だから・・・」

ふん、とクラウスが鼻で笑う。

「甘ったれるな。たかだかガラクタの山を燃やされたくらいで、メソメソ泣いてるやつに、メイドが務まるか」

「ガ、ガラクタじゃありませんっ、あれは———」
思わず、クラウスを睨み上げる。

「他人にとっては不用品でしかない」

「父母の形見なんです」

「思い出という形のないものに価値をおくのは、お前が貴族だからだ。
食うや食わずの下層階級は、感傷にひたってる余裕などない。その日のパンを手に入れることに必死だ。
そんな生活のことを考えたことがあるか?」

「・・・・・」
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