冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
恐怖に引き返そうとして、自分がすでに取り囲まれていることに気づく。闇の中で緑色に炯々と光る目。

「ひっ」
みっともなく声を漏らす。

勝ち誇ったように、有能な番犬の群れが「バウッ」と唸った。
気配を殺して忍びより、侵入者を取り囲み、そして襲いかかる。

気づいた時には、もう遅い。

吠え声とともに、ひと塊りの闇が飛びかかってきた。

「きゃあっ!」
とっさに身を伏せる。

空気を裂く音が耳をかすめ、身体から勢いよくショールが奪い去られた。

ショールを咥えたまま、グルグルと喉の奥で唸り声をあげている。

他の犬が、じりじりと距離をつめ襲いかかろうとしているのが目に入る。
外敵の喉笛に正確に食らいつくように訓練された、しなやかな躯体。
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