冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
もう悲鳴は出てこない。
どの口が助けを呼べるのか。
ここで犬に噛み殺されるなら、いっそあの時ーーーそんなことを思った。
這いつくばったまま、観念して目をつぶる。
・・・・えっ・・
衝撃はいつまでたっても襲ってこなかった。
なにか、ぶつかり、もみ合うような物音と、犬の唸り声。
目を開けると、トラウザーズに包まれた二本の男性の足。
だれ!?
視線を足から上にすべらせる。広い背中が目に入る。
その時、割れた雲のあいだから月の光が差しこんだ。あたりをけざやかに照らし出す。
鈍く赤く光る髪。
彼が腕を大きく振ると、食らいついていた黒い塊が飛びすさった。
フロイラに襲いかかろうとしていた犬だ。
「こ、侯爵様・・」
呆然とつぶやく。
どの口が助けを呼べるのか。
ここで犬に噛み殺されるなら、いっそあの時ーーーそんなことを思った。
這いつくばったまま、観念して目をつぶる。
・・・・えっ・・
衝撃はいつまでたっても襲ってこなかった。
なにか、ぶつかり、もみ合うような物音と、犬の唸り声。
目を開けると、トラウザーズに包まれた二本の男性の足。
だれ!?
視線を足から上にすべらせる。広い背中が目に入る。
その時、割れた雲のあいだから月の光が差しこんだ。あたりをけざやかに照らし出す。
鈍く赤く光る髪。
彼が腕を大きく振ると、食らいついていた黒い塊が飛びすさった。
フロイラに襲いかかろうとしていた犬だ。
「こ、侯爵様・・」
呆然とつぶやく。