冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「こんなところで何をしてるんだ、お前は。そんなに死にたいのか」
首をひねると、フロイラを見下ろして憮然と言う。

「その・・炉のところに行きたくて」
もごもご口にしながら、慌てて立ち上がる。

「炉?」

「なにか燃え残りがないかと・・」

「あるわけないだろう。全部灰だ」

「灰でもいいんです、それだけでも」

「それで邸の外に出たのか。夜間は番犬を放しているというのに」

言いざま、クラウスが大きく腕をふるった。
手にした皮の鞭で、飛びかかってきた犬を打ちすえる。

ギャン、と悲鳴をあげて、犬が離れる。

「匂いを覚えさせていない者には、無条件に襲いかかるようにしつけてある。だから使用人には夜間の外出を禁じている。助けは期待しないほうがいいぞ」

「侯爵様、逃げてください」
叫ぶように言う。
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